目取真俊『虹の鳥』

目取真俊『虹の鳥』を読みました。
 

 
暴力暴力暴力。
暴力描写に溢れる小説。
 
明田川融『沖縄基地問題の歴史 非武の島、戦の島』に取り上げられていて、本書の存在を知りました。
本書が引用され、論じられているので、詳しくはそちらをどうぞ。
 
ここでは、本のある箇所を引用して紹介しておきたいと思います。
明田川前掲書にも引用されています)
それ以外は何も言いますまい。
 
「アメリカーに小学生が強姦された」(p.189)という、米兵による少女暴行事件が起こり、沖縄で大規模な集会が開かれます。
テレビで実況中継されています。
八万五千人集まる中で、「真面目そうで清潔な感じを与える」(p.190)少女が壇上に立ち、人々に訴えかけます。それを見ていた比嘉が言います。
 
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「吊してやればいいんだよ。米兵の子どもをさらって、裸にして、五十八号線のヤシの木に針金で吊してやればいい」
 ふいに比嘉が口を開いた。
「本気で米軍を叩き出そうと思うんならな」
 松田が大声で笑い出した。体をよじり、止めようにも止められないというように笑い続ける松田を、小柄な少女がきょとんとした表情で見ている。
 そうなのだ。カツヤは胸の中でつぶやいた。比嘉の言う通りだった。それ以外に方法などなかった。八万五千の人々に訴えている少女の姿は美しかった。だが、必要なのはもっと醜いものだと思った。少女を暴行した三名の米兵たちの醜さに釣り合うような。
 
(p.190-191)
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今年103冊目。


 

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