ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー『冷戦から内戦へ』

 ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー『冷戦から内戦へ』を読みました。
 大学生時代ぶりの再読です。
 

 
 冷戦の終焉により世界各地で発生した内戦。解決の道はあるのかを考察した本です。1994年に出版されていますが、未だ輝きを失いません。本書における「内戦」は、先進国の大都市で頻発するイデオロギー的な理由付けのない暴力的な行動(連続殺人等)を含みます。それらは「分子的な内戦」と表現されます。
 
 医療の分野でトリアージ(本書では「トリアージュ」)という言葉があります。戦争においては、野戦病院の収容能力が限られていたために、病院まで搬送して治療する人を選別しました。選別すること、「段階を区別し、優先順位を設定し、責任を負うべきものをクラス分けする」(p.111-112)こと。それをトリアージと言います。エンツェンスベルガーは、トリアージの考え方を持って内戦に向き合うべきとします。「ボスニアで敵対し合っている各派にちょっかいを出すよりも先に、ぼくらは自国のなかの内戦を、根絶やしにする必要がある。」「いまはいたるところで、自分の門前が燃えているのだ。」(p.113)
 今の日本で考えると何が燃えているのでしょうか。何が「分子的な内戦」を引き起こしうるのか。格差、貧困、社会的排除(Social Exclusion)など色々と考えられるでしょう。日本に住む市民は、まず日本で起きているこれらのことについて、原因を考え、対策を練らなければなりません。それこそが優先順位のはじめに来るのだろうと思います。私も今、新聞の切抜きや書籍を収集し勉強しているところです。
 
 今年10冊目。


 

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *