日本の選択点を考える(4.医療格差)

日本の選択点@東京新聞の「4.医療格差(研修制度見直し or 不人気科の待遇改善)」について、考えてみましょう。
 
 地域ならびに診療科目別の格差の問題は昨今のドキュメンタリーでもホットなテーマであります。
 地方病院の勤務医、外科、小児科、産婦人科の医師が減っています。
 
 原因のひとつは労働環境の問題です。特に外科、小児科、産婦人科の労働環境は劣悪です。東京新聞には、自殺した小児科医の配偶者のインタビューが載っていました。「医師は犠牲の精神でやってきたが、善意だけではやっていけなくなっている」と訴えています。
 2004年に導入された臨床研修制度も原因のひとつ。2年の研修期間中に各科を巡回できるようになり、科目選択の自由が広がりました。その半面で医師の偏在につながりました。たとえば小児科で激務を経験すると、小児科を希望する気が失せてしまいます。NHKスペシャル「医療再建 医師の偏在 どう解決するか」(2008/12/21放送)で、研修医が率直にそのようなことを言っていました。結果として人気のある科目、地域に医者が集中することになってしまいました。
 
 ①労働環境の改善を行うべきです。(a)待遇改善が必要でしょうし、そもそも忙しくならないように(b)医者の仕事を楽にする、つまり医者にかからないようにする取り組みも必要です。
 また、②医者の偏在を改善しなければなりますまい。医者の偏在に関しては、(a)医者の総数を増やしつつ、(b)医者の配置のコントロールが必要になると思います。具体的には以下の通り。
 
 ・①(a)⇒医者の待遇改善
 不人気科目の医師の給与UP。特に勤務医でしょうか。また政府が推進している、不人気科目の研修の充実もよい施策だと思います。
 
 ・①(b)⇒病院以外の活用
 単身者の私が言うのもなんですが、たとえば小さな子どもを育てていて、急に様子がおかしくなったら、親はあわててしまって、救急車を呼んでしまいたくなるようなこともあるでしょう。しかし、すぐに病院に行くことを考えるのではなく、例えば自治体が提供する窓口を使ってみるとかを考えるべきです。私の住む自治体では、親向けの電話相談窓口が開設されています。
 あと最近では妊婦のたらいまわしの問題なんかが起きていますが、病院以外の活用として、助産院の活用を行っていくべきでしょう。残念ながら、今は制度設計のミスにより助産院が減っています(フジTV ザ・ノンフィクション「「命を大切に」なんて たやすく言うな」(2008/11/2放送))。
 制度を整えて、患者も病院以外の制度を知って、活用していく必要があります。
 
 ・①(b)⇒予防医療
 夕張医療センターの村上智彦医師が予防医療の重要性を訴え、実行していますね。村上医師が北海道せたな町で働いていたときも、予防医療への取り組みとして、地域回って説明会を開いていたりしました(NHK ETV特集「ある地域医療の“挫折” ~北海道せたな町~」(2006/5/20放送))。できるだけ医者にかからなくて済むようにすること。これは我々一人ひとりの取り組みですし、行政も情報提供するなど、サポートを行うべきでしょう。
 
 ・②(a)(b)⇒医者を増やすための医学部定員増とヒモ付き奨学金制度
 医学部の定員増は政府も行っていますし、民主党も主張しています。しかし、医学部に行くにはお金がかかるというのも忘れてはなりますまい。地域の大学で、ヒモ付きの奨学金を出すことも検討するべきだと思います。奨学金を出す。もし、そこの大学の医学部に勤務するのならば、奨学金は返さなくていいといった制度です。医者目指す人増えそうですし、地域に人も来そうですし、一石二鳥かと思います。
 
 ・②(b)⇒地域と科目で割り当てる医師数の上限設定
 NHKスペシャル「医療再建 医師の偏在 どう解決するか」(2008/12/21放送)で紹介されていた通り、英国では色々な取り組みが行われています。日本でも導入を検討するべきです。一定地域で医師数が一定数を超えたら、そこでの開業はできない、等。科目ごとの医者の数も上限設定してよいでしょう。整形科医ばかり増えるのも、医療全体を見たときには疑問ですし。
 
 「医療格差」という問題に閉じずに、広く医療の問題に関して、現在いろいろな取り組みが行われています。最近も新聞で取り上げられています。特に、患者の受け入れ口が無いというのが問題で、各方面で対策がとられています。私の気づいた範囲でご紹介。
 妊婦たらいまわしに関して、札幌市と大阪府で新たな取り組みが行われています。病院の空き情報を集約し、コーディネータを置いて、医師や救急隊に搬送先を伝えます。「長期的には産婦人科医やNICU(新生児集中治療室)を増やすことが必要」なんですが、短期的な取り組みとして、搬送時間の短縮に効果が出ているようです。(東京新聞 2009/1/6 「危機のカルテ 「病院探し」役が効果」より)
 また、自衛隊病院の開放を拡大し、受け入れ口を増やすということも検討されているようです。その手があったか。興味深いですね。(東京新聞 2009/1/11より)
 
以上です。
(財源の問題は別にまとめる予定です)
 
初版作成:2009/1/11(日)


 

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