京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』を読みました。
京極夏彦『陰摩羅鬼の瑕』
あまり前評判はよくなかったのですが、なかなかよい本だと思います。
読み始めてすぐに、事件の犯人と殺害方法がわかりますので、ミステリーとしてはいまいちかもしれません(なにせあの関口巽にもわかっちゃうんですから!)。そこが評価の低いところなのでしょうか。
特に深く考えないで理解したつもりになっている生と死の境界。これがいかにあやうく、ゆらぎやすいものであるか。この小説を読むと考えさせられます。
また、これは京極作品を読んでいつも思うのですが、記述の慎重さは特筆するべきです。ノベルス版P.716に儒教の「家を父から引き継ぎ、時代へ嗣ぐこと」に対する京極堂の発言があります。京極堂は、性差別や階級差別の問題に配慮しながらも、そうした仕組みが特定の場所や特定の時代に機能していたことはどれだけ弊害があったとしても一概には否定できないとし、話を続けていきます。『絡新婦の理』等で宗教と女性の問題を取り上げている京極堂でありますが、単純な評価はしない。こうした京極堂の慎重さは高く評価されるべきでありましょう。
さて、今年に入り京極作品は『姑獲鳥の夏』から『陰摩羅鬼の瑕』までのシリーズを読み終えました。どれも素晴らしく甲乙つけがたいのですが、強いて1つあげろと言われれば『狂骨の夢』です。『姑獲鳥の夏』も捨てがたいのですが。
瑕レビュ待ってました!
これは、最初から、オチはわかる、のが前提のお話だと思うのですが、
まあそれはいいとして、オチそのものが…というか、あのオチが成立すること自体がわたしとしてはいただけませんでした。境界、いくらなんでも曖昧すぎます。推理小説読んだ時点で気づけ。という。
次回作以降でフォローが無い限り、今後の京極作品自体にクエスチョンをつけざるを得ないなあという気がしていますー。
ないでしょうねえ(笑)。
京極さんのほかの作品は別シリーズで登場人物も別なのでしょうか。ほかのも読んでみようかな。
リンクしてます。
『瑕』の由良伯爵家は(だいぶ前の代ですが)『巷説百物語』のシリーズにも出てきます(済みません、うろ覚えです)。『巷説百物語』のシリーズは面白いですよ。3作で完結です。なんだかだ既刊は殆ど全部読んでいるのデスガー。
フォロー、やっぱないっすかねえ…(苦笑)。
既刊ほとんど読んでいるんですかー。さすが。
『陰摩羅鬼の瑕』はちょっと気になる点があるので、土日に調べてまた書き込みます(たぶん)。