”戦後”のファルージャ

アルジャジーラ(Aljazeera.Net)に「ファルージャにおける集団墓地の女性と子供」というタイトルの記事が出ています。
 
ナパーム弾によって黒こげにされ、誰が誰だかわからないままに集団墓地に埋葬された73人の女性と子供がいるとの話が取り上げられています。米軍発表ではナパーム弾の使用はないので、この話を確認する手だてはないようなのですが、死因は未だ不明瞭であるとのこと。
 
その他にも危険なファルージャの様子がレポートされていますが、その点については、「Falluja, April 2004 – the book」にファルージャに残ったイラク人ジャーナリストのレポートが出ていますので、下記に紹介します。
 
ファルージャ:戦争は終わったが平和はこない

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ファルージャにおける抵抗の鎮静化?

アルジャジーラ(Aljazeera.Net)の「米国によるファルージャ攻撃成功に対する異論」より。
 
米軍のジョン・ザットラー中将曰く、米軍はファルージャの抵抗を鎮静化したとのことです。米国に支持されたイラク暫定政府も作戦は成功したと宣言しています。そして住民たちは数日中に家に戻れるだろうという見通しを述べています。また、それぞれの家族につき100ドルの現金、及び家庭や仕事への被害に対する補償の申し出をしています。
 
しかしながら、イラク各地での数多くの戦闘により暗い影を投げ掛けられています。そもそも、なぜファルージャ攻撃が行われたのでしたでしょうか。記事にはイラクアナリストであるトビー・ドッジ氏の発言が引用されています。
 
「彼ら(たぶん米国を指しています by るとる)はファルージャが根元であり、それゆえに諸問題への解決であると言い続けている。しかし、モスルでの暴力によって、そのように言うことはひどく愚かであるということが示された。」
「暴動は関係の悪化によって増幅された全国的な現象である。この戦争が勝てるものとは思わない。彼らがイラク社会全般の支持基盤との関係を悪くしたからである。」
 
(↑訳があやしいので、記事原文見てください。alienate/alienationは「疎外」とすると日本語にならなかったので、「関係悪化」としました)
 
あと、東京新聞に以下の記事があります。参考まで。
 
米軍への抵抗続くファルージャ」(東京新聞)
 
ファルージャにいるのはヨルダン人のザルカウィを中心とした外国人勢力であるという説明が米国によって行われていました。しかし、上記記事によれば、旧フセイン政権の治安組織を中心に若者たちが加わった”イラク人”勢力がファルージャで抵抗していたとのこと。イラク各地に広がる戦いも彼ら中心に行われているようです。

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ファルージャの米軍

シバレイのblog 新イラク取材日記」の「ファルージャで何が起きているのか?」という記事において、「Fallujah in Pictures」というサイトへのリンクが貼られております。
 
シバレイさんもおっしゃっていて、私もかつて「テレビのファルージャ」で述べましたが、戦争の悲惨な状況ってなかなか報道されません。しかし、Webでは出ています。上記サイトでは主に傷ついた米兵の写真が数多く載せられています。戦いの中、米兵も傷つき、死んでいっています。そのことを改めて確認させられます。
(写真はカラーで、血がすごいので、お体に差し障りあると思われる方はお気をつけください(直リンクも貼らないでおきました))

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ファルージャの人道的状況(Aljazeera.Net「2004年のファルージャ」&Asahi.com)

アルジャジーラ(Aljazeera.Net)で「2004年のファルージャ」として特集が組まれています。紹介しておきます。
 
現段階のトップニュースでは、「戦いの続く中、ファルージャのモスクで、傷を負って非武装の男性を米海兵隊員が銃で撃っているのがビデオ映像に映し出された。それを受け、米軍は調査を始めた」ことが報じられています。NBC televisionが映像を流したとのことです。
 
また、これはアルジャジーラのみならずAsahi.comでも報じられていますが、イラクのアラウィ首相が、ファルージャに人道的問題はないと言っています(Asahi.comの記事は「「人道問題はない」 ファルージャの現状にイラク首相」)。BBCやロイターは食料や水が不足していることを報じています。認識にだいぶ差があるようです。一国の首相ならば、市民の安全を確保するために、悪い情報にこそ目を向けて行動を取るべきだと思いますが。
なお、アルジャジーラも、ファルージャ病院の院長代理にインタビューし、「ファルージャの人道的状況は未だに”最悪(a disaster)”」であることを伝えています(アルジャジーラ,前掲記事)。
 
援助活動も行われようとしているのですが、米軍により、イラク赤新月社(イスラム圏の赤十字社)援助団の活動ができなくなっているとのこと(Asahi.com,前掲記事)。ひどい状況です。

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ファルージャの”壊滅的な状況”

Aljazeera.Netで「ファルージャの”壊滅的な状況”」という記事が出ています。
 
「6日間にわたる米軍主導の猛攻撃はファルージャの市民たちを壊滅的にした。そしてイラク北部の都市モスルでの戦闘を刺激した。」
 
ということです。
その他にもいろいろなことが報道されていますが、驚くべきことに、情報統制が行われています。
 
「ニューヨークでは、ファルージャについて政府方針を遵守するよう警告したイラク当局からの新しい指示によって、メディアがひどく困惑していると「ジャーナリストを守る委員会(the Committee to Protect Journalists)(CPJ)」は述べた。」
(※読みにくかったので、多少変更しました。at 2004/11/22)
 
あと、アルジャジーラのイラク支局もイラク暫定政権の命令によって閉鎖されていたのですね。知らなかった。
 
この記事については「Falluja, April 2004 – the book」の増岡さんが翻訳されています。
ファルージャは破滅的状況にある」です。ご一読を。
 
(本文におけるAljazeera.Netからの記事翻訳は”るとる訳”です。間違いあったらご指摘ください。)

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ラフール・マハジャンほか著『ファルージャ 2004年4月』

ラフール・マハジャンほか著『ファルージャ 2004年4月』を読みました。
 


ファルージャ 2004年4月

 
2004年4月の米軍によるファルージャ攻撃について、ファルージャ入りしたラフール・マハジャン、ジョー・ワイルディング、ダール・ジャマイル各氏によるレポートを翻訳した本です(対話1編にエイミー・グッドマンも参加しています)。
 
印象的なところを挙げましょう。P.33に救急車の写真が載っています。ダール・ジャマイルさんが撮ったもので、運転手を正確に狙った射撃痕がフロントガラスに残っていることがわかります。救急車はサイレン鳴らして、ランプを点滅させて走っていた訳ですから、事故や誤射ではなく確実に狙って撃った痕ということになります。
 
あと印象的なのは、土井敏邦著『米軍はイラクで何をしたのか―ファルージャと刑務所での証言から』に書かれていることとの類似です。ファルージャで戦っていたのは一般市民であったとこの本にも記されています。
 
「レジスタンス、つまり戦士(ムジャヒディーン)は、街の人々なのです。」
(P.35 ※)
 
また、この本には翻訳者の増岡賢さんによる「イラク侵略・占領と日本の動き」という、イラク戦争解説の優れた文章が載っています。短めですが、イラクの歴史や、国際法との関係、日本の関与について論じられています。必読でしょう。
 
継続的なフォローアップがされているというのもこの本の大きな特徴です。
私のブログでもたびたび紹介している「Falluja, April 2004 – the book」というブログで継続的な情報発信が行われています。
 
現代企画室。1,500円(税別)。
 


原文は「戦士」のルビとして「ムジャヒディーン」と書いてありますが、このBlogでその表現は出来ないので「戦士(ムジャヒディーン)」としました。

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マスコミのファルージャ、ミニコミのファルージャ

マスコミ、例えばAsahi.comでは「米軍「大半制圧」、スンニ派地域では蜂起 ファルージャ」という報道がされています。
 
他方、左欄「イラクNews」で紹介している各サイトでは、紹介しきれないほど被害状況が報告されています。
 
印象深いブログがあったので、紹介します。
ある大学生の怒り:Khalid Jarrarさん」(Falluja, April 2004 – the book)より。
 
「家をぺしゃんこにされて,赤ん坊の息子を殺された男性が,死んだ赤ん坊をカメラの前で抱いてこう言っていた。「これがザルカウィだ。これがザルカウィだ,間違いない。じゃなきゃ殺すもんか。」」

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土井敏邦『米軍はイラクで何をしたのか―ファルージャと刑務所での証言から』

土井敏邦『米軍はイラクで何をしたのか―ファルージャと刑務所での証言から』を読みました。
 


米軍はイラクで何をしたのか―ファルージャと刑務所での証言から

 
2004年4月の、米国によるファルージャ攻撃後の5週間にわたるイラク取材の後に、ファルージャと捕虜虐待についてレポートした本です。
 
恥ずかしながら知らなかったのですが、ファルージャ vs 米国のきっかけは、2003年4月のある事件にありました。市内の小学校に陣地を構えた米軍に対して、ファルージャ市民が抗議行動をしました。それに対し、米軍が銃撃を加え、17人が殺害されたのです(p.3-4/p.41-2)。米国の”民主主義”には異論を唱える権利は含まれていないようです。これでファルージャの反米意識は高まったのでした。
 
実は、ファルージャはフセイン政権と対立関係にありました。ファルージャ出身の空軍司令官が処刑されたり、それに反対してファルージャで大規模デモが起きたりしていました。従って、市民の大半はフセイン政権の崩壊に喜んでいたのです。しかし、フセインに代わる政権を作ってイラクから撤退すると期待されていたのに、米軍によるイラク占領は続きました。占領への疑問が出てくる中で起きたのが上記の小学校での事件だったわけです(p.38-43)。
 
4月の攻撃における具体的な被害状況は本書を読めばわかります。写真とともにインタビューが掲載されています。白旗を掲げていたのに、狙撃され子供を失った母親(p.15-16)や、休戦後に狙撃されて病院に運び込まれた子供の姿(p.29-30)がそこにはあります。
 
さて、4月の攻撃では、米軍は激しい抵抗にあいました。抵抗したのは誰だったのでしょうか。
ファルージャで戦っているのは「「アルカイダ」など外国人武装勢力」(p.31)であるという説明が米国によって行われました。しかし、実際はどうだったのでしょうか。公立学校のアラビア語教師人がインタビューを受けています。彼の言葉を引用しましょう。
 
「私は公立学校のアラビア語の教師です。私が銃を持って米軍と闘った第一の理由は、米軍が占領軍だからです。」(p.31)
「実際、銃を持って闘ったのは教師や公務員、病院関係者、労働者などさまざまな層の人たちです。それはまさにファルージャの住民です。私は教師ですが、その後ろで生徒たちも闘いました。商店主たちも、モスクで祈っていた人たちも銃を持ってかけつけました。」(p.34)
 
一般市民が米軍に抵抗していたのです。「住民が街を守るために立ち上がった”住民の闘い”だったのです。」(p.34)
結局、前述の被害状況を合わせて考えますに、ファルージャでは米国こそがテロリストだったと言えるのではないでしょうか。街を破壊し、家族を殺したテロリスト。
 
テロと闘う米国ならば、まずは自らのテロ行為を止めるべきです。また、テロには屈しないのであれば、日本政府も米国にファルージャ攻撃を止めるよう同盟者としての助言を行うべきではありますまいか。
 
岩波ブックレット。480円(税別)。

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