ジョン・ハーシー『ヒロシマ』を読みました。
戦後間もなく『ニューヨーカー』紙に掲載されて、その日のうちに30万部を売り切ったという、広島の悲惨さを米国に知らしめた著名なルポルタージュです。本書は明田川融によって訳しなおされるとともに、ルポで取り上げられた6人のその後を描いた「ヒロシマ その後」を加えた増補版です。ヒロシマの記憶が消え失せようとしている危機感で、法政大学出版会が再出版に踏み切ったのだそうです。
筆致はいたって冷静です。
第五福竜丸の悲劇を受けて原水爆禁止の動きが生まれたものの、日本政府は実験中止を米国に要求しなかったこと、原水爆禁止運動は“「いかなる国」問題”で分裂してしまったことなどを踏まえ、近年ヒロシマ・ナガサキの記憶が薄れていっていることを指摘し、本書出版の意義を改めて確認する明田川融のあとがきも必読です。
今年56冊目。