野口旭『経済対立は誰が起こすのか』を再読完了。
メモを取り、再読をし、だいたいわかったのですが、一点わからないところが残りました。それは、国際収支表の解説をしている部分(P.83-88)です。
国際収支表の「収支」には「受取」=黒字と「支払」=赤字が含まれている。それはいいとして、
「たとえば、「輸出」とは、財やサービスを外国に提供して何らかの金融資産、たとえば外貨を入手するという取引である」(P.85)
とあります。これはその通りですので、わかります。しかしその次でわからなくなります。
「このとき国際収支表には、経常取引における「受取」の側と、資本取引における「支払」の側に、かならず同額だけ記帳される」(P.85-6)
ななな、なんで「外貨を入手」(P.85)しているのに資本取引においては「支払」の側に記帳されるのだろう・・・。
と、悩んでしまうのです。
本著を読んでもわかりません。あまり詳しく説明されていませんので。
困っていたら、岩田規久男『国際金融入門』にヒントがありました。
岩田規久男『国際金融入門』P.30-31の注に書いてありますが、国際収支表を通常の複式簿記と同じように考えるとわからなくなってしまいます。
国際収支表では以下のように考えるそうな。
—
[商品を輸出]
日本から米国に車を輸出している場合で考えると、輸出しているわけだから、経常収支は「受取」=黒字で記載される。
[お金を得る]
車の代金をドル預金への入金の形で得ることになる。
この場合、日本から見ると対外資産が増加したことになる。これは資金(または資本)の日本から米国への流出と考えることが出来るので、資本取引は「支払」=赤字として記載される。
資本取引は「支払」=赤字であっても、資産としては増加しているわけだし、それは、米国の居住者である米国銀行に対する資金の貸し付けになっている。
※注
—
これを一国のマクロ的に見ると、
経常収支黒字(あるいは赤字)=資本収支赤字(あるいは黒字)
になるということらしい。
対外資産の増加を、資金(または資本)の日本から米国への流出と考えるというのが理解のポイントのようです。
※注
ここで”なるほどなるほど。要は輸出で稼いだお金を海外投資に回している訳ねー”と考えるのは間違いです。
先ほどの例には説明の都合上、現実と合っていない部分がありました。車を輸出した会社はドル預金をそのまま保有するわけではありません。円に換えて、労働者への賃金支払いなどに使うことでしょう。輸出で稼いだお金がそのまま海外投資に回るわけではないのです。
実際に海外投資を行っているのは、いわゆる投資家です。なんで海外投資を行っているかというと、その方が有利に運用できるからです。従いまして、
輸出で稼いだ外貨を海外投資に回している
というのは正しくないのです。正しくは、
盛んに海外投資を行っている結果として経常収支黒字になる
のです。
詳しくは野口旭『経済対立は誰が起こすのか』を参照。
私もまったく同じところで引っかかりました。で、検索で辿り着いて合点
がいきました。サンクスです。