銭俊華『香港と日本 ──記憶・表象・アイデンティティ』を読みました。
だいぶお若い香港出身の研究者による一冊。
「『カードキャプターさくら』への片思い」というところの記述が興味深い。CCさくらにおいて、香港は香港として登場します。香港出身のキャラがいて(中国出身ではなく!)、広東語と英語を使います(中国の標準ではなく)。翻訳の不徹底や、キャラが中華風の設定であるところからも、日本の制作サイドとしてはアニメに中華風味付けをしたかっただけなのかもしれませんが、香港においては香港人としてアイデンティティの発揚があるなかで、好意的に受け止められたということでした。
後段では、香港において「日本」がどのように取り扱われてきたかが論じられ、イギリス占領下は「無職」だったのが、中国の民族意識の喚起だったり、逆に民族意識からの離脱の文脈で「日本」が語れれるという。日本の侵略からの解放を香港の主体性と捉えるというわけです。
他にもはじめの方はガイドブックの側面や、言語状況を紹介するページなどもあって、香港理解に役立つお思います。おすすめ。
今年29冊目。
※図書館で借りた本。