吉見俊哉『万博幻想 -戦後政治の呪縛』を読みました。
大阪万博、沖縄海洋博、つくば万博、愛知万博の4つの博覧会を取り上げ、博覧会を巡る政治を論じた本。万博はそもそもは「地方の行政システムが、中央の官僚システムと補助金、そして多数の大企業を巻き込んで地域のインフラを整備し、開発の基礎を固めていく重要な「動員」の仕掛け」(p.178)でありながらも、徐々に市民参加が広がってきた歴史が明らかになります。
吉見氏は愛知万博に委員として関わったので、愛知万博の記述が一番充実していました。
しかし、吉見氏がなぜに反対運動の側に立たなかったのかがよくわからない。運動の側に立って、博覧会の政治を見つめていってもよかったはずであります。高畠通敏の議論を持ち出すまでもなく、市民参加の広がりの中で、そういう知識人のあり方こそが求められているのではないでしょうか。
今年95冊目。