堤未果『社会の真実の見つけかた』を読みました。
著者の専門である米国のルポルタージュを元に構成されています。
論点はいくつかあるのですが、今回は教育の点に触れます。
大阪維新の会の教育基本条例案に期待する人は、本書の「第2章 教育がビジネスになる」の米国事例を参照してみると参考になるでしょう。
「落ちこぼれゼロ法」で市場原理主義的な教育改革が導入され、教師・生徒の双方において、逆説的にも”落ちこぼれ”が生まれてしまっている状況が、インタビューを通じて描かれます。章の最後では、日本でも同じような傾向にあることが指摘されます。
「金八先生」が流行った日本、我々が望むのはここで描かれているような教育の姿ではないはずです。予防策としては、競争に追われる教育改革ではない、もうひとつの教育改革を進めておくことでしょう。あるべき教育の姿に向けて常に改革を続け、市場原理主義的な教育改革に対抗する、といった方向性が必要なのではないかと考えます。成績以外の面の評価も大事にしつつも進学率を上げるための取り組みをするとか、社会情勢にあわせて給与を下げるとか。自ら変わっておかないと声の大きい人がそこにつけ込んできて、教育委員会悪いとか言い出し、支持を得ちゃうわけです。
もうひとつの教育改革をやっとかないと、日本も米国のような悲惨な姿になりかねないと思います。教育委員会や現場の教師たち、組合からの教育改革の構想を求めます。
オススメの一冊。
今年7冊目。