河野武『Twitterアクティブサポート入門 「愛される会社」時代のソーシャルメディアマーケティング』を読みました。
「アクティブサポート」のノウハウが詰まった本です。
「アクティブサポート」というのは著者の造語ですが、見事な名付けだと思います。聞いただけで何となくイメージが伝わりません?
私の仕事の専門はコールセンター/コンタクトセンターのシステム提案・構築でありまして、コールセンター業界でもソーシャルメディアの対応をどうするか、というのが議論になってきています。昨年開催された「コールセンター/CRMデモ&コンファレンス2011 in 東京」において、基調講演にソーシャルメディア研究で有名な熊坂仁美さんが登場した、というのは象徴的でありました。Twitterを例にしながら、企業がソーシャルメディアを使ってアクティブに顧客サポートサービスを提供するための基本的な考え方や導入方法を本書は教えてくれます。
企業に対して何か気に入らないことがあった場合、お客様は以下のような行動をとると思います。
①公には何も言わない
②仲間うちで悪く言う
③Webサイトやコールセンター/コンタクトセンターに苦情(メールやら電話やら)
今まで対応できていた③の声のみでした。しかし、Twitterなどのソーシャルメディアだと①や②も拾い出すことができます。企業として積極的に①や②を拾い出して、お客様が何も言ってこずとも、企業の側からサポートしていこう、というのが「アクティブサポート」です。
全体的に非常に参考になるのですが、特に興味をひかれたのが「アクティブサポートはコールセンター部署で対応するべき」という意見でした。その理由のポイントは以下の2点にあると思います。
①個々のお客様に適切に対応できるスキルが必要
→コールセンターのオペレータのみなさんなら、電話で訓練を受けています。またコールセンターには研修・育成のカリキュラムや品質保証の仕組みが整っています。
②コールセンター/コンタクトセンターとの密接な関係が必要
→お客様がトラブルにあっているような場合、コールセンターにエスカレーションして対応依頼する必要が出てきます。そんなとき、同じ部署で密接に連携できると、顧客の満足度も上がると考えられます。
「アクティブサポート」を具体化していくことが一番の課題でしょう。サポート窓口は企業の顔になるので、慎重になったり二の足を踏んだりする企業もあろうかと思います。本書のおもしろいところは、そうしたときに上司を説得するフレーズが掲載されているところです。上司パターン別に具体的に書いてあります。みんな大変よねえ、と笑えてきます。
あと、最後に対談が付いていますが、そこでのFacebook評価が興味深い。実名で本音をどこまで言うのか、比較的クローズドな世界の中で企業がどこまで関わることができるのかという疑問が上げられていました。
オススメ。
今年8冊目。
(おまけ)
「エスカレーション」って業界でよく使うのですが、一般的ですかねえ。一言で言うと「転送」です。自分で対応できないときに上位職能者(スーパーバイザー)に転送したり、別のサポート窓口に転送しますが、それらを「エスカレーション」と言います。単なる「転送」とは違って、お客様対応を引継含めてきちんと行う、という意味あいが込められているのかなあと考えています。
エスカレーションしすぎるといわゆるたらい回しになるので基本的にはよくありません。しかし、薬や化粧品などの専門的な回答が必要となるコールセンターではむしろ推奨されていたりします。要は業務次第といったところでしょうか。センターによっては、FCR(First Call Resolution:一次解決率)という評価指標を設けていまして、エスカレーションしすぎてないか、お客様対応を迅速に行えているか、を計測して品質管理しています。
丁寧にレビューを書いていただきほんとうにありがとうございます。
ぼく自身がコールセンター出身なもので、そのスキルやノウハウ、体制としてのすごさを知っているので「ソーシャルメディアはコールセンターに任せるのがベスト」だと気づくことができました。
満足されてるお客さんの声が聞けるのもアクティブサポートのいいところですし、ソーシャルメディアをあまり恐れすぎないで、企業がいままで以上に顧客接点を拡充できるチャンスと捉えていきたいですね。
p.s.
「エスカレーション」はたしかに専門用語なのかもしれませんね。気にせず使っちゃってました。ぼくの定義では「より適切な窓口に責任をもって引き継ぐ」という感じです。