ハンス・マグヌス・エンツェンスベルガー『冷戦から内戦へ』を読みました。
大学生時代ぶりの再読です。
冷戦の終焉により世界各地で発生した内戦。解決の道はあるのかを考察した本です。1994年に出版されていますが、未だ輝きを失いません。本書における「内戦」は、先進国の大都市で頻発するイデオロギー的な理由付けのない暴力的な行動(連続殺人等)を含みます。それらは「分子的な内戦」と表現されます。
医療の分野でトリアージ(本書では「トリアージュ」)という言葉があります。戦争においては、野戦病院の収容能力が限られていたために、病院まで搬送して治療する人を選別しました。選別すること、「段階を区別し、優先順位を設定し、責任を負うべきものをクラス分けする」(p.111-112)こと。それをトリアージと言います。エンツェンスベルガーは、トリアージの考え方を持って内戦に向き合うべきとします。「ボスニアで敵対し合っている各派にちょっかいを出すよりも先に、ぼくらは自国のなかの内戦を、根絶やしにする必要がある。」「いまはいたるところで、自分の門前が燃えているのだ。」(p.113)
今の日本で考えると何が燃えているのでしょうか。何が「分子的な内戦」を引き起こしうるのか。格差、貧困、社会的排除(Social Exclusion)など色々と考えられるでしょう。日本に住む市民は、まず日本で起きているこれらのことについて、原因を考え、対策を練らなければなりません。それこそが優先順位のはじめに来るのだろうと思います。私も今、新聞の切抜きや書籍を収集し勉強しているところです。
今年10冊目。
オバマ氏の米国大統領当選
以前にこんなこと書いてましたが、意外にも早く実現しました。
共和党ブッシュ政権にべったりだった自民党政権はどう折り合いをつけるのでしょうか。
たぶんそのまま民主党次期オバマ政権を支持しちゃうんでしょうけど。
オバマ氏本人が慎重な姿勢を見せているので、大統領に就任する1月以降にならないと具体的な政策は見えてこないかもしれません。しばらくはウォッチですなー。
日本の首相が麻生さんから変わることが前提で、できれば軍事再編に伴う沖縄基地再編の件はゼロベースで、日米ともに再考してほしいところです。
自己責任なんてウソ
米国の下院で「緊急経済安定化法案」(金融救済法案)が成立しました。
「最大7千億ドル(約75兆円)の公的資金を投じ、金融機関から住宅ローンや関連の金融商品などを政府が買い取る」(asahi.com)というもの。
いや、ほんとに、自己責任論なんてウソっぱちですよね。
結局政府の助けがないとダメなんじゃん。
T・K生/「世界」編集部編『韓国からの通信-1972.11~1974.6-』
T・K生/「世界」編集部編『韓国からの通信-1972.11~1974.6-』を読みました。
維新体制下の韓国における市民の抵抗をレポートしたもの。
今では、取材を元に池明観教授が書いたということが明らかになっています(こちらを参照)。
朴正熙による戒厳令や金大中事件等が出てきますので、韓国現代史を学ぶ入り口としても最適。先日亡くなったソルジェニーツィンの影響が韓国でも非常に大きかったということもこの本で改めて確認できました。
今でこそ好きにものを言えますが、それは過去の数々の運動あってのことです。自由、その価値を改めて考えてみるべきでしょう。
続編も随時手に入れて読んでいくことにしよう。
今年53冊目。
堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ 』
堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ 』を読みました。
結構売れている本ですよね。
戦争含めてあらゆるところに民営化を進める米国の実態がレポートされています。
普通に生活していても、病気にかかると多額の医療費で貧困に追い落とされるという社会は間違っています。医療や教育は国が支えるべきです。
(2008/8/1追記)
NHKスペシャルで「激流中国病人大行列 ~13億人の医療~」というドキュメンタリーが放送されました(2008/6/15放送)。興味深いことに、米国と中国の医療の現場は似ています。どちらも患者は高額の医療費に押しつぶされてます。いずれの社会も間違っていると思います。
今年44冊目。
ジョゼット・シーラン+菊川怜『NHK 未来への提言 ジョゼット・シーラン カップ1杯の給食が子どもを救う 』
ジョゼット・シーラン+菊川怜『NHK 未来への提言 ジョゼット・シーラン カップ1杯の給食が子どもを救う 』を読みました。
NHK未来への提言というドキュメンタリーがありまして、同名のドキュメンタリーに感銘を受けたため、本も読んでみようと思った次第。ドキュメンタリーについてはこちらで紹介しています。
菊川怜のダダーブ難民キャンプレポートや、WFP日本事務所代表の玉村美保子の解説が付いています。いずれもドキュメンタリーの補足として参考になりました。
世界の食糧問題を考えるはじめの一歩としてオススメできる一冊。本棚行きだな。
WFPマンスリープログラムもここで紹介しておきます。
毎月定額が引き落とされ、募金できるプログラムです。当方は今月から参加。
今年43冊目。
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村井吉敬『エビと日本人Ⅱ』
村井吉敬『エビと日本人Ⅱ』を読みました。
村井吉敬『エビと日本人』(1988年)の新版。内容が違いますので、『エビと日本人』も読む必要があります。
“エビ”を通して見えてくる世界と日本とのつながり。
2004年のスマトラ島沖地震の津波被害は記憶に新しいところでありますが、エビの養殖を進めるためにマングローブ林を伐採し、それがために津波の被害が広がりました。あの被害は我々の食とつながっていたのです。
どのような食のあり方が正しいのか、難しい問題ではありますが、消費者それぞれが日々問い続け、少しでも改善への道を探っていくべきだと思います。
ところで、最近のエビの主流は「ブラックタイガーエビ」ではなく「バナメイエビ」だそうな。
百貨店の地下を覗いてみましたが、まだ主流は「ブラックタイガーエビ」のようです。「バナメイエビ」は数が少なかったですね。加工食品では多く用いられているのかもしれません。今度から注意してみてみよう。
今年1冊目。
ジャン・ジグレール『世界の半分が飢えるのはなぜ?』
ジャン・ジグレール『世界の半分が飢えるのはなぜ?』を読みました。
父と子の会話形式で、世界の飢えの問題が取り上げられています。
自然災害、政治腐敗、穀物類の市場価格操作、戦争といった飢えの原因。国家や国際企業による、人びとを服従させるための道具としての飢え。援助の問題点や未だに残る植民地政策(モノカルチャー)。様々な点から飢えについての議論が行われています。
こういう本をテキストにして、中学や高校で教育が行われるべきですね(行われているかもしれませんが)。
名著。オススメ文献集入り決定。
今年116冊目。