湯浅誠『どんとこい、貧困!』

 湯浅誠『どんとこい、貧困!』を読みました。
 
 
 
 「イスとりゲーム」のたとえはわかりやすい。どんなに努力したところで、イス自体の数が少なければ、イスに座れない人が出現してしまいます。これが今の日本社会の姿なのです。変わる、否、変えるべきはこの社会のあり方です。
 ルビ付で、誰にでも読めるように作られています。オススメ。
 
 今年82冊目。

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雨宮処凛『プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方』

 雨宮処凛『プレカリアート―デジタル日雇い世代の不安な生き方』を読みました。
 
 
 
 雨宮処凛の論述だけではなく、プレカリアートとされる人々へのインタビュー・さまざまな立場の人が集まって繰り広げるディスカッション・石原慎太郎との対話などなど、新書なのに盛りだくさんで、非常に参考になる本です。
 私は就職氷河期の世代なので、努力してもどうにもならないという感覚は少しわかります。親にも頼れないような人々と比べたらはるかに恵まれていた方ですけれども。
 
 やはりここは非正規社員を生む仕組みを止めて、利益や社内留保の吐き出し(まずここからだろう)、時間外労働削減・時短勤務・給与削減等で調整を行うような仕組みにしないと(戻さないと)いけないんじゃないかと思います。カゼで一日休んだらクビになりうる雇用のあり方は、どう考えてもおかしいですから。
 
 今年81冊目。

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朝日新聞「ロストジェネレーション」取材班『ロストジェネレーション さまよう2000万人』

 朝日新聞「ロストジェネレーション」取材班『ロストジェネレーション さまよう2000万人』を読みました。
 
 
 
 「ロストジェネレーション」=「さまよう世代」(p.3)です。1970年代初頭から80年代初めにかけて生まれた世代で、約2000万人います。かくいう私もちょうどその年代です。
 
 「『総中流から格差社会へ』という日本社会の根源的な変化こそが、ロストジェネレーションを生み出した母体であった。」(p.189)
 
 学校を卒業して社会に出たとき、戦後最長の経済停滞が彼ら彼女らを待ち構えていました。雇用は不安定化し、正社員になれないままに歳を重ねる人も居ます。生き方のモデルも無いままに、「ロスト」=「さまよう」姿がレポートされます。
 どうすれば問題は解決するのでしょうか。
 ・非正規社員から正社員になれる仕組みを作る(固定化しない)。
 ・新たな雇用を作り出す。
 ・職務給を導入して特定の世代だけが損をしないようにする。
 といった議論が紹介されていますが、どれも実現は困難でしょう。そんな中でも、政治を志したり、NPO等の社会的企業を興したり、運動をしたりする人々の姿が紹介されています。人と人とのつながりの中にこそ、新たな道は見出されうるということでしょうか。
 
 今年21冊目。

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NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編『ワーキングプア解決への道』

NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編『ワーキングプア解決への道』を読みました。
 

 
ワーキングプア日本を蝕む病』の続編。
 
韓国、米国、英国、そして日本におけるワーキングプア問題の現状と、解決に向けた取り組みを描いています。
 
韓国もやばいですね。
大卒で正社員として就職できる人は半数以下(48%)ですよ!!(p.26-27より)
 
英国の取り組みが興味深いのでご紹介。
「コネクションズ」という若者支援の仕組み。待つだけではなく、相談員が町中で若者に声をかけ、就職の斡旋を行っています。関連する機関が連携しており、職業訓練にうまく民間企業を巻き込んでいる。訓練中も賃金が支払われるのです。日本は職業訓練校が訓練するので、賃金が支払われず、訓練を続けられなくなることが多いのです。
「シュアスタート」というのも上手くできている。産まれてくる子供と親のサポートが行われています。「チャイルドトラストファンド」という口座が国から贈られるのですが、子供が18歳になるまで引き出せません。親の使い込みを防ぐおもしろい仕組みです。
 
本書の中で、内橋克人氏が言っていますが、日本では、社会保障については会社が大きな役割を負ってきました。しかし、いわゆるグローバル化が進む中、会社を中心とする共同体が崩れます。社会に会社に代わるような社会保障を支える仕組みはなく、個人は個人として、社会に放り出されることになってしまったのです。
 
解決策を考えるに参考になる本。オススメ。
 
今年96冊目。

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藤本由香里『私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち』

藤本由香里『私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち』を読みました。
 

 
1998年に出版された本の文庫化。
知らなかったなー。これも名著ですな。
少女マンガを中心に、現在までのその変容を描き出します。
 
“性”も取り扱っており、マンガも載っているので、満員電車の中で読むのはやや恥ずかしい・・・。
ま、気にせず読みましょう。
 
少女マンガとそれ以外とを対立的にとらえる傾向が少しあるような気がします。
最後にエヴァンゲリオンとの比較がありますが、最近の少女マンガと比較し、「両者には決定的な違いがある」(p.432)として論を進めます。エヴァ知っている人からすると、ここのロジックは無理がありあり。違いを強調しすぎているような、少女マンガの独自性を訴えすぎているような傾向が気になります。
 
私の知らない漫画家もたくさん出てきます。
マンガも読まないとなあと反省することしきりです。
 
今年73冊目。

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バカばっか@ホシノ・ルリ、あるいは、あんた、バカぁ?@惣流・アスカ・ラングレー

あ、頭が痛い。
 
「携帯電話充電のために駅構内のコンセントから3銭分の電気を盗んだとして、神奈川県警相模原署が女子大生(20)を窃盗容疑で摘発した。」(asahi.com)そうな。
 
なんで110番したの?>電話した人
なんで摘発するの?>相模原県警
なんでそのまま報道してるの?>朝日新聞
 
その場で注意すればよかったでしょ?
 
本当に頭痛がしてきました。
寝よう。

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大平健『純愛時代』

大平健『純愛時代』を読みました。
以前読んだ本の再読。
 

 
本文はいきなり症例が続くので、まずは「あとがき」から読むべきです。
「自分」の二重性、すなわち純愛を求める自分と、現実に生活する自分がいて、純愛を求めれば求めるほど現実の自分に無理が出て発病にいたるという構造が簡単に解説されています。本格的な考察は『拒食の喜び、媚態の憂鬱』を読まないとわからない。今度読むことにしよう。
 
今年57冊目。

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NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編『ワーキングプア 日本を蝕む病』

NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編『ワーキングプア 日本を蝕む病』を読みました。
 

 
「働いても、生活保護水準以下の暮らしを強いられている人たち、『ワーキングプア』が大量に生まれていることは、身近で深刻な問題です」(p.20)
 
「ワーキングプア」の実態をレポートしたドキュメンタリーの書籍化。ドキュメンタリー放送後の様子も少し書いてあるので、見た人にも参考になることでしょう。
対策に関してはいろいろと議論があるところでしょうが、まずは現実を把握するところからはじめなければなりません。「ワーキングプア」の現状を把握するには最適な本だと思います。
全てのケースが非常に衝撃的です。
誰もが陥る可能性があります。決して他人事ではなく、我々の問題なのです。
 
今年49冊目。

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森達也『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』

森達也『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』を読みました。
 

 
オウムを内部から撮った「A」、続編の「A2」の監督による、他者への憎悪ではなく、他者への想像力を取り戻すためのエッセイ集。
確かに私も身内を殺されれば、加害者を憎悪します。当たり前であります。
 
「でも今の僕は非当事者だ。非当事者には非当事者の役割がある。だから憎悪の便乗はやめようと提案する。」(p.301-2)
 
この「非当事者の役割」は、いつも心の隅にとどめておきたいと思います。
 
タイトルも良いですね。
 
なお、「A」と「A2」はTSUTAYAで借りることができました。さっそく観ることにしよう。
 
今年27冊目。

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