岩田規久男『日本経済にいま何が起きているのか』

岩田規久男『日本経済にいま何が起きているのか』を読みました。
 
日本経済にいま何が起きているのか
 
オススメ。これは読むべき。
 
木村剛『投資戦略の発想法』中谷巌『痛快!経済学』を紹介するときに、”構造改革”がまず大事といった考え方について留保してきましたが、本書はそれらの著者とは逆に、”構造改革”の前に、金融政策でインフレ期待を醸成してデフレを脱却し、その後”構造改革”を行うべきだという考え方をしています(リフレ派と言いますね)。
 
私もその通りだと思いますが、日銀の福井総裁は否定的です(本日の日経朝刊1面より)。与謝野経財相も懐疑的なので、実施にはまだまだ時間がかかるかもしれません。そんな暇ないと思うのですが。
 
日銀の福井総裁といえば、もう一点。
消費者物価指数(CPI)が「安定的にゼロ%以上」になることを量的緩和解除の1つの判断基準にするようです(本日の日経朝刊1面より)。しかし、本書によればCPIは真の値よりも1%ほど高いと考えられるとのこと。安売りや質の向上を反映していないからだそうです(p.180-1)。そう考えるとCPIが「安定的にゼロ%以上」になったところで、実はデフレ傾向は続いている可能性があります。また、そもそも「安定的にゼロ%以上」というのがよくわからない。本書でも指摘されていますが、あいまいだと投資計画や消費計画を立てることができません。明確にインフレ上限を○%という形で定めて、そのルールに基づいて日銀の金融政策が行われるべきではないかと考えられます。
 
今年24冊目。

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根井雅弘『ケインズを学ぶ』

根井雅弘『ケインズを学ぶ』を読みました。
 
ケインズを学ぶ
 
オススメできない本です。
 
”ジュニア向け”に書いたとしていますが(序)、なんでこんな内容になるのでしょう。
伝記部分はいいのですが、「有効需要の原理」の説明などを読んでも、何でケインズが革命的なのかが伝わりません。
しかも、ページ数少ないのにケインズ以降の経済学史的な記述を入れているので、フィリップス曲線も説明不十分なままに取り上げられていて、この本で初めてフィリップス曲線に出会う”ジュニア”には理解に苦しむでしょう。
 
参考になるところもありますが、”ジュニア向け”として考えるとダメな本です。ケインズを学びたい人も、他の本を読んだ方が得るところが多いのではないかと思います。
 
今年23冊目。

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薮下史郎『非対称情報の経済学』

薮下史郎『非対称情報の経済学』を読みました。
 
非対称情報の経済学
 
以前読んだ本の再読です。
 
スティグリッツの情報の経済学の解説本。
情報が非対称な市場、例えば中古車市場では需要曲線は単純な右下がりになりません。価格が高いときは右下がりになりますが、価格が低いときは逆に右上がりになるのです。あまりに価格が安いと、中古車の品質悪化を懸念して、需要量が減ってしまうからです。結果としてP.93にあるような面白い需要曲線になります。
 
オススメできますし、非常に面白いですが、ちょっと難しいですね。
 
今年22冊目。

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岩田規久男『経済学を学ぶ』

岩田規久男『経済学を学ぶ』を読みました。
 
経済学を学ぶ
 
経済学の基本的な考え方が身に付きます。
 
ただ、需要と供給の考えが、いつもの曲線ではなく表を使って説明されています。工夫されているといえば工夫されているのですが、他の本がほぼすべて曲線を使って説明していると思いますし、今後のことも考えると曲線の方がよかったような。また、曲線を使っていないことで、価格弾力性の説明がわかりにくくなっていると思います。
 
でもいい本です。オススメ。
 
今年21冊目。

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日本経済新聞社編『いやでもわかる経済学』

日本経済新聞社編『いやでもわかる経済学』を読みました。
 
いやでもわかる経済学
 
ずっと前に読んだ本の再読です。読んだのは文庫版。
 
発行が1991年1月です。
日本経済が景気後退に陥ったのは1991年の春からとされます。
つまり、本書はかなりバブリーな頃の日本経済を基に書かれています。従って、今読むとかなり違和感、というか懐かしさがあります。
1年に5回も公定歩合が引き上げられた時期があったのね・・・(1990年。本書文庫版P.144)。企業が採用において「できるだけ採れ」なんて言ってた時期があったのね・・・(P.180)。
 
しかし、身近な物語から経済を解読するという姿勢は高く評価できますし、何よりわかりやすい。古本屋で見つけたら買って読んでみるのもいいと思います。
 
今年19冊目。

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ポール・R.クルーグマン『良い経済学悪い経済学』

ポール・R.クルーグマン『良い経済学悪い経済学』を読みました。
 
良い経済学悪い経済学
 
これまたかつて読んだ本の再読。
 
要は、国家というのは多元的なので、あたかも国家=1企業のようにとらえて、国際競争力がどうのこーのだとかいう議論をするのは間違いであるということです。
そもそも、GDPにおける貿易の割合はそれほど大きくないので、雇用などに問題があるならば、それはまず国内の問題として捉えられなければなりません。
非常に参考になる本であります。
 
今年16冊目。

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内田茂男『これで納得!日本経済のしくみ』

内田茂男『これで納得!日本経済のしくみ』を読みました。
 
これで納得!日本経済のしくみ
 
以前読んだ本の再読。
発行が2000年と古いのですが、超名著です。
 
メモを取りながら読んだのですが、メモタイトルが、
 
・貿易黒字
・「10年不況」
・日本の失業
・バブル経済
・為替相場
・比較優位の原理
・貿易収支(I-Sバランス)
・税金
・財政赤字の是非
・バブル経済
・景気対策と乗数効果
・失業
・景気循環
・経済成長
・GDP
 
となりました。日本経済がテーマのようにタイトル付けされていますが、経済の入門書と言っていいと思います。わかりやすく、なおかつ本格的。オススメです。
 
2000年発行なので、データが古い部分があります。適宜、最新の経済財政白書などでチェックする必要があります。その点には注意。
 
今年15冊目。

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ジョーゼフ・E.スティグリッツ/カール・E.ウォルシュ『スティグリッツ入門経済学 第3版』

ジョーゼフ・E.スティグリッツ/カール・E.ウォルシュ『スティグリッツ入門経済学 第3版』を読みました。
 
入門経済学第3版
 
ずっと前に読んだ初版を1月上旬から改めて読み進めていました。
途中で第3版が昨年出版されたことを知り、新たに購入し読み進めました。今日やっと通読が完了。内容が盛り沢山で、じっくりと読む必要があります。
 
正直なところ、ミクロ経済学分野はわかりやすかったのですが、マクロ経済学分野がいまいち理解しきっていません。読み直してもわかりそうにないので、もう少し初学者向けの本を読んでから、再度この本に取り組みたいと思います。
 
ちなみに初版と第3版とではボリュームが違います(後者の方が多い)。
記述も違います。第3版では例示がIT分野を中心にしているようです。
・・・というように基本的に初版よりも第3版の方が充実しています。気になったのは比較優位の部分が削減されているということです。本のボリュームの関係から仕方なかったのかもしれません。しかし、説明量は削減されていますが「交換とグローバリゼーションにかんする論争」というコラムが挿入されており、比較優位の考えを応用させながらグローバリゼーションを巡る議論を取り上げています。タイムリーな話題ですので、非常に参考になります。やっぱり第3版の方がいいですな(当たり前ですが)。
 
続編のミクロ経済学とマクロ経済学はまだ翻訳が完了していないのか、出版されていません。訳者の方々のお仕事を楽しみに待っております。
 
今年14冊目。

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中谷巌『痛快!経済学』

中谷巌『痛快!経済学』を読みました。
 
痛快!経済学
 
今、とある経済学テキストを読んでいるのですが、先にこちらの本を読み終えてしまいました。以前読んだ本の再読です。
 
経済学入門としては非常にいい本だと思います。
惜しむらくは発行が2002年と若干古いと言うことです。最新の情報は盛り込まれていませんが、経済学的なものの考え方は古くなることはありません。需要と供給の考え方や、比較優位説などの説明は非常にわかりやすいです。
 
ただ、木村剛さんの本を紹介するときにも言いましたが、本書も、単純な議論ではないことは指摘してはいますが(p.248)、不良債権処理などの構造改革あってこそ景気回復につながるという考えをしています(p.257)。
この点は議論のあるところなので、鵜呑みにするのではなく考えながら読んでいく必要があると思います。
 
今年13冊目。

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田中秀臣『経済論戦の読み方』

田中秀臣『経済論戦の読み方』を読みました。
 
経済論戦の読み方
 
リフレ派の立場から書かれた経済の入門書。
不況の原因はデフレ不況であり、その解消のためには金融政策でマネーを発行して、インフレにもっていけばよいとします。
 
この本を読むと、小泉首相の進める”経済改革主義”がどうして間違いなのかがわかります。竹中平蔵さんへの批判も厳しい。
でも選挙で大勝しちゃうからなー。困ったものだ。

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