興梠一郎『中国激流』

興梠一郎『中国激流』を読みました。
 
中国激流
 
この本は面白いです。超オススメです。
「政治化された経済」(p.127)である中国の現在の姿を様々な視点から伝えています。
 
恥ずかしい話、この本を読むまで知らなかったのですが、中国では現在、「物権法」という私有財産を認める法律の検討を行っています。また、役人の不正も多く、市民運動も起きています。このような状況下で、果たして共産党の一党独裁は継続できるのでしょうか。他方では、「新保守派」という、市場経済化が腐敗の原因であると考え、なんとあの文革に新たな可能性を見いだす人たちも出てきています。
 
中国の行く末は混沌としています。今後も目を離せません。
そのことを再認識させてくれた本です。

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宮島喬『ヨーロッパ市民の誕生』

宮島喬『ヨーロッパ市民の誕生』を読みました。
 

 
P.17の写真がすごい象徴的です。
英国のウェールズ地方の駅の窓口の写真なのですが、英語と”ウェールズ語”の列挙がされているのです。日本ではあまり意識されないですが、ヨーロッパにおいて、言語の権利を巡ってどのような動きがあるのかを紹介います。
 
そのほか、”シティズンシップ”要求を巡る昨今のヨーロッパの状況を伝えていて非常に面白いです。これもかなり盛りだくさんな本なので、読み通すのが大変ですけど。

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木宮正史『韓国』

木宮正史『韓国』を読みました。
 

 
えー、コホン、大きな声で言いましょう。
超名著です!!
 
いくつかのポイントに分けて韓国を論じているのですが、評価が分かれるポイントにおいて、相対する評価を紹介し、その上で自らの評価を下しています。このような論じ方は非常に参考になるものです。国際関係と国内の問題と関連させて政治を論じる方法がまた非常に勉強になります。
 
韓国のことを考えるにあたってはかならず触れるべき名著と言えましょう。強いて難を挙げるとすると、後半が盛りだくさんすぎるところですね。

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「イミダス」と「現代用語の基礎知識」と「知恵蔵」

「イミダス」と「現代用語の基礎知識」と「知恵蔵」。
 
何というジャンルか知りませんが、毎年この時期になるとこれらの本の中から何も考えずに「知恵蔵」を購入しておりました。今年は少し選んでみようと思って、本屋で立ち読みしてきました。
 
まず「イミダス」は某執筆者の議論に疑問を感じるので却下。
残るは「現代用語の基礎知識」と「知恵蔵」です。
 
「現代用語の基礎知識」はコンパクトサイズになりました。非常に持ちやすくてよいです。
 

現代用語の基礎知識 2005

 
「知恵蔵」は大きくて持ちづらいのが難でした。2005年版の「現代用語の基礎知識」くらいの大きさがベストです。内容も非常によかったです。スーダンのダルフール危機の解説などは「知恵蔵」より詳しいものでした。
 
しかし、「現代用語の基礎知識」は地図が少ないのです。
国際関係のニュースを見るときには地図が欠かせません。地図がないとイメージしづらいです。一方、「知恵蔵」は地図が豊富です。しかも付録に地図帳が付いてくるのです。この点でやはり今年も「知恵蔵」を購入することになりました。
 

知恵蔵 2005

 
ちなみに、しっかりした手帳まで付いてきます。
今年は結構手帳が流行っているように見受けられます。手帳の活用を薦める本がいくつか出ていますね。私はCLIEを使っているので不要なのですが。誰かにあげようかな。

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竹中千春『世界はなぜ仲良くできないの?―暴力の連鎖を解くために』

竹中千春『世界はなぜ仲良くできないの?―暴力の連鎖を解くために』を読みました。
 

世界はなぜ仲良くできないの?―暴力の連鎖を解くために
 
別の本で著者のことは知っていました。で、ある本屋に行ったら置いてあったので、手に取ってみた次第。「阪急コミュニケーションズ」という出版社があることすら知りませんでした(失礼)。
 
国際政治の本はいろいろと読んできましたが、私の読んだ中では最良の入門書。
 
最後の方に出てくるのですが、”わからないこと”に対して、「私はよくわかりませんから、わかりました、おっしゃるとおりです」(P.246)みたいな対応をするのではなく、
 
「わからないのでちょっと待ってください」
 
と勇気を持って言うこと。わからないのにわかったようにするのではなくて、わからないところで立ち止まって、問いただし、自分の問題として考えること。この姿勢を保つことは重要であると考えます。

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