佐藤泰志『鳩』を読みました。
傷ついた鳩によって、別れの決断が揺り動かされながらも、もう戻ることのない二人。
佐藤泰志の未刊行作品です。
電子書籍だと、出版社側にもコストはかからないのではないですかね。在庫を持たなくてもいいはずだし。この調子?で、佐藤泰志の、未刊行含めた著作すべてが刊行されてくれないかなあ。
今年44冊目。
福間健二編『もうひとつの朝 佐藤泰志初期作品集』
福間健二編『もうひとつの朝 佐藤泰志初期作品集』を読みました。
未刊行作品10編が収録されています。
いずれもみずみずしい。青年期を描いた傑作短編群であります。
佐藤泰志の時代の暗いところと真摯に向き合う姿は、まさに今日求められるのではないでしょうか。
今年43冊目。
辻仁成『海峡の光』
辻仁成『海峡の光』を読みました。
辻仁成もまた函館市文学館で紹介されていた小説家の一人であります。
看守の斎藤と受刑者の花井。二人の小学校時代の記憶と現在とがかわるがわる語られていき、時代は青函連絡船の廃航を迎えます。廃航により人々の人生も大きな影響を受けていくわけですが、時代の変化のなかでも、二人の心の闇は闇のまま、それを抱え込みながら今後も生きていくのでしょう。
花井が少年刑務所にあえてとどまろうとするのは、「世の中の外にいられることとの自由」(p.78)を享受しようとしていたからでしょうか。理由は明確に語られることなく、超俗したかのような彼の姿が描かれて終わるのみです。
うーん、しかし、辻仁成が芥川賞で、佐藤泰志が芥川賞で無いんだから、文学の評価は難しいものですねえ。
今年42冊目。
※図書館で借りた本。
佐藤泰志作品集
佐藤泰志作品集を読みました。
700ページ近い大著であります。主要な小説・詩・エッセイが収録されています。
近年は再評価されていて、文庫も多く出版されており、文庫を揃えればいいので、本書の意義は薄れているかもしれません。
・・・が、後期に書かれた「星と蜜」「虹」が収録されていて、これがかなり良いのです。この2編のために本作品集を手にとってもいいと思います。
「そこのみにて光輝く」は映画化されました。観ました。小説の世界を見事に映像化していると思います。
今年40冊目。
佐藤泰志『海炭市叙景』
佐藤泰志『海炭市叙景』を読みました。
佐藤泰志は函館市文学館で出会った作家です。気になりまして手に取った次第。
作者の自死により途中で終わった作品でありますが、短文織り成す叙情溢れる小説です。様々な立場の様々な生き方が、透き通った文体で表現されています。逆に言うと、ウェットにそれぞれに踏み込むことはありません。表面的に見えるかもしれませんが、だからこそ表現できた世界なんだなあと思います。
近年再評価されていて、映画化もされていて、観てみました。
映像化はやっぱり難しいのかもしれませんね。あまり言うとネタバレなので隠しますが、『海炭市叙景』のいちばんはじめの話が、ずっと影を投げかけているところが小説にはあるんです。映像にはうまく表現できていませんでした。最後でやろうとしていたのはわかるんだが・・・。残念。
今年39冊目。
伊藤計劃『ハーモニー』
伊藤計劃『ハーモニー』を読みました。
終わり方は残念です。ハーモニーは崩せなかったのでしょうか。トァンが「下山してまもなく」老人たちは決断したとありますが、トァンの「肩に世界がかかっている」とまで上司から言われる中で、トァンは行動していて、それは周知のことだったんだから、下山後にミァハを殺したことを伝えれば、社会と構成員との完全なる一致は止められたのではないか。と思った次第。ちょっと終わりが急ぎすぎではないでしょうか。
あと、「大災禍」の後とはいえ、「生府」による支配を市民は受け入れるのかというのも気になりました。
しかし、こないだの参院選のように、めちゃくちゃな憲法草案を書いていても、景気良くしてくれそうな政府であれば支持されるわけです。そう考えると「大災禍」のあとで生命・健康を最大限尊重してくれるのであれば、市民は自由やプライバシーを手放し、「生府」による統治を大いに支持してしまうのかもしれません。
今年38冊目。
※図書館で借りた本。
山口雅也『ミステリーズ《完全版》』
山口雅也『ミステリーズ《完全版》』を読みました。
ミステリーの短編集です。あまり面白くは・・・。
今年37冊目。
※図書館で借りた本。
矢作俊彦『ららら科學の子』
矢作俊彦『ららら科學の子』を読みました。
タイトルは鉄腕アトムからでしたか。前々から気になっていた本でした。
30年ほど中国に渡っていた主人公から、現代の日本が見つめられます。
今年36冊目。
※図書館で借りた本。
楊逸『時が滲む朝』
楊逸『時が滲む朝』を読みました。
現代中国の青春小説でしょうか。天安門事件前後がシンプルな日本語で描かれています。
今年34冊目。
※図書館で借りた本。
シャン・サ『天安門』
シャン・サ『天安門』を読みました。
はじめのうちは政治小説のようでいて、読み進むと幻想的な色合いが濃くなっていきます。
血だらけで山の頂を目指す主人公は、作者の生き方それ自体なのでしょう。
今年32冊目。
※図書館で借りた本。