エラスムス『平和の訴え』

エラスムス『平和の訴え』を読みました。
 

 
キリスト教の立場から、平和の神の口を借りて訴えられる平和論です。
 
「人間が一緒に仲よく暮らすためには、人間という共通の呼び名だけで、その上何がなくとも充分でありましょうに。」(p.24)
 
は至言であります。
 
今年48冊目。
※図書館で借りた本。

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岡田憲治『デモクラシーは、仁義である』

岡田憲治『デモクラシーは、仁義である』を読みました。
 

 
Kindle版を買おうとしたのですが、帯が魅力的でして、新書版を買ったのでした。
 
「デモクラシーのために習慣を変えてみる」というところ、以下の4つが挙げられますが、「言葉」に目を向ける著者の姿勢は前々から変わらず一貫しています。それこそが政治を支えるからなのでしょう。
 
1.純粋合戦をやめる
2.言葉を豊かにするのにかかる費用はケチらない
3.空気ではなく言葉に縛られることにする
4.我々の政治は「よりまし選択」だと諦める
 
「純粋」になってしまうところは私もあるかも。気をつけて生きてみよう。
 
非常に参考になる本なのですが、最後に批判的なことを書きますと、「」を多用する文体なので読みにくい。引用なのか、専門用語なのか、作った話なのか、誰かの発言なのかがはっきりしないので、非常に分かりづらくなっています。あと、批判的なことを書くときにあえて名前を伏せているところ。オープンにして批判すればいいのではないでしょうか。何を守ろうとしているのか、理解に苦しみました。
 
今年41冊目。

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杉山光信『モラリストの政治参加―レイモン・アロンと現代フランス知識人』

杉山光信『モラリストの政治参加―レイモン・アロンと現代フランス知識人』を読みました。
 

 
副題の方が主題です。
レイモン・アロンと、サルトル他の現代フランス知識人との関係が描かれていて、非常に興味深い本であります。
 
今年35冊目。
※図書館で借りた本。

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吉本隆明『今に生きる親鸞』

吉本隆明『今に生きる親鸞』を読みました。
 

 
久々の再読。
私は吉本隆明はあまり好きではないのですが、本書は平易な文章で親鸞の思想が語られており、現在にまで通じるところを示そうとしていて、非常に良い本だと思います。
年取ったら親鸞の原著とかを、いろいろと調べたりしながらゆっくりと読んでみたいものだ。
 
今年23冊目。

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海老坂武『NHK 100分 de 名著 サルトル「実存主義とは何か」 』

海老坂武『NHK 100分 de 名著 サルトル「実存主義とは何か」』を読みました。
 

 
もー、さすがのNHKだよー。このご時世にサルトルですよ!
番組も見ました。
 
私が人生でいちばん影響を受けた本がサルトルの『実存主義とは何か』です。
その本に関する最適な入門書にして、サルトルの伝記とも読めるでしょう。同じくサルトルの『嘔吐』をかなり参照していますね。サルトルのいろいろなところが、すでに『嘔吐』で現れていた、というような論じ方がされていると思います。
 
オススメな一冊。
 
今年63冊目。

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川出良枝+谷口将紀 (編集)『政治学』

川出良枝+谷口将紀 (編集)『政治学』を読みました。
 

 
政治学のテキストブック。200ページほどのコンパクトな本ながら、国際政治や熟議民主主義に至るまで、いろいろなジャンルに渡って解説されていて、非常に参考になりました。
佐々木毅さんの弟子の皆さんが書いた本だからでしょうか、政治制度改革の評価が甘いのが難点。
とはいえかなりオススメです。
 
今年32冊目。

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重田園江『社会契約論』

重田園江『社会契約論』を読みました。
 

 
サブタイトルの通り、ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズについて、社会契約を軸に論じた本。
著者はフーコーの研究者であって社会契約論の専門家ではありません。テクストを前に悩みながら、読者と一緒に考えていく感じで書かれています。
 
大学の頃にここら辺を勉強していて、ロールズに端を発する政治思想や政治哲学の議論にもちょこっと触れました。いろいろな論者がいる中で、私にとってはロールズの正義の原理が一番しっくりときました。自分に関する情報が制約される「無知のヴェール」を被った状態で、他者と共存するルールを考える。そうすると「人は全員のために選択せざるをえない」(p.236より正義論の再引用)ので公正なルールが生まれるはずです。自由が保障される公正なルールのもとで、差異を訴え合いつつ、他者同士が共存していけばいいんじゃないかなあと思います。
 
おすすめ本。
 
あと、文献案内にあった桑瀬章二郎 編『ルソーを学ぶ人のために』は、我が家に積読として存在していたので、紹介されていた、吉岡知哉「制時制度と政治ー『社会経絡論をめぐって』ー」も合わせて読みました。相変わらず極めてロジカルで、優れて平易な文章を使って、わかりにくいルソーの社会契約論に対する一つの解釈を示しています。こちらもオススメです。久しぶりに吉岡知哉『ジャン=ジャック・ルソー論』を読み直そうかなあ。すごーく高い本だったけど、バイト代はたいて大学時代に買って、あまりの面白さに興奮して読んだっけなあ。懐かしい。
 
今年31冊目。

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矢野久美子『ハンナ・アーレント – 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』

矢野久美子『ハンナ・アーレント – 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』
 

 
ハンナ・アーレントの伝記。
アーレントと周りの人々との交流が豊かに描かれています。
しばらくアーレントは読んでおらず、しっかりと学び直そうと思った次第。
 
オススメです。
 
今年19冊目。

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柄谷行人『世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて』

 柄谷行人『世界共和国へ―資本=ネーション=国家を超えて』を読みました。
 
 
 
 国家を内側から解体するのは無理(国家は国家に対して存在するから)という論理でカントに注目して世界共和国への展望を語ります。
 カントに至るまで長いのですが、カントに触れてからは短く終わってしまいます。うーん、中途半端な感じ。国際政治のゼミで、カントの「世界平和のために」とか大学の頃に読んで論じていたことを思い出しまた。本書はカントに至るまでがポイントなのかなあ。でもカントは政治学の分野で普通に今でも参照されているわけですし、本書の意義がよくわかりません。
 
 今年25冊目。

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